掲載記事 >> 「Band Journal 2003年9月号」

カンカライエロー:
サックスのミュートだから、「ミューサク」なのか!
コロンブスの卵的発想だね


 酔った勢いで友人にヤバイ約束をしてしまった。「不肖ハマダ、年末までにジャムセッションに参加します!」……サックスを初めて早半年、ドレミしか吹けないのに、いや、ドレミすら満足に吹けないのに(ASOVIVAホームページ「サックスはじめて物語」もヨロシクね)ナンテコト言っちゃったんでしょう。これはマズイ!でもね、練習できない環境が悪いんですよ、環境が。しがない一人暮らしのアパート、音なんか筒抜けだもん。うちには防音室もないしさ…なーんて言い訳はもうできない!アルトサックス用のミュートが出たのです!その名も「ミューサク」。そのウワサを聞きつけ、早速カンカライエローさんと連れ立って取材に行ってきました!

 開発したのは、サックス奏者でもあり、ヴォーカリストやヴォイス・トレーナーとしても活躍する松本泰幸さん。自身の教室の生徒たちが自由に家でサックスを練習できるようになれば、と6年前から制作に着手。何度も改良を重ねた結果、見事今年完成にこぎつけたというワケです。

 「サックスのミュートと聞いて、劇的なものは期待できないということを念頭において吹いたのですが、結構音量が下がるなと思いました」とは、試作品を吹いたヤマハ渋谷店の藤田さんの談。ここで「ミューサク」の構造を説明しよう。ミュートと聞いてまず想像するのは、トランペットのミュートではないだろうか?ところが、この「ミューサク」はなんとネック内部に装着するミュートなのだ!本体は特別な繊維がついた黄色いキャップで、ネックの入り口に栓をする感じ。イエローさんもびっくり。「おお〜、こうきたか!これはコロンブスの卵的発想だね」

 キャップとベルをふさぐレザーのカップ(写真参照)でワンセットとなっている「ミューサク」だが、まずはキャップをネックに装着した状態だけで練習するのが正しい使用法。「これでそっと吹いて、息が入る感じをつかんでください。抵抗があるうちは、強く吹き過ぎているということなんです。無理しないでこれだけの息で鳴るんだということを習得してから、実際に本体につけて音を出してみてください」(松本さん)そうすると本体で吹いた時、余分な息を入れ込まないのでより一層弱音効果が見込める。つまり「ミューサク」はミュートとしての役割はもちろん、息の使い方を取得する効果もあるのだ。余分な息を使わずに楽器を鳴らすということは、頭では分かっていても実感としては分からない場合があるもんね。「息をうまく使う練習になるね、これ!」イエローさん、目の色が変わった。「腹式呼吸を使わないと音が震えちゃう。初心者にはいいトレーニングになるよね」

 この「ミューサク」、カップをあわせれば平均12dBから最大30dBの弱音効果があるという。確かに響きが軽減され、TVの大きめの音量程度までに音は弱くなっているようだ。これなら夜の9時くらいまでなら余裕で練習できそう。「キャップをはめずにカップだけで吹くとまた違う響きが楽しめるね」とイエローさんが「ボレロ」を吹く。なんとなく上手に響くから不思議。「イエローさん、なんか上手に聴こえますよ」「うん、なんかフランスっぽい音がするよね」と、チョー低レベルな感想を述べてる二人。「上下の響きがなくなるから、耳障りが良くなるんですよ」松本さんがやさしくフォローしてくれる。この柔らかい音を生かして、ステージで使ってみようかなという人も出ているとか。いろいろ使い方のアイディアは広がるなあ。「これなら明日から学校の昼休みでもドンドン練習できるぞ!」とイエローさんも嬉しそうだ。

 ミュートも手に入れたし、これで年末のジャムセッションに一歩近付いた?!そうそう、私『チュニジアの夜』吹いてみたいんですよねえ……と我が師匠、織田さんに言ったら、「キミ、いきなりそりゃハードル高すぎ!」と早速キツイお言葉が飛んできた。うーん、やっぱりサックスの道は険しい……!  (文:浜田陽子)

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